太陽光発電システムの点検が必要な理由とは?点検の種類も徹底解説

太陽光発電システムはメンテナンスフリーで設置した後は手間いらず、といったフレーズを一度は聞いたことがあるかもしれません。結論としては、太陽光発電所の点検は必要です。太陽光発電システムの点検が疎かになっていると、大きな売電損失につながる可能性もあります。

ここでは、太陽光発電事業を行う上で、必ず押さえておきたい点検の必要性とその主な種類について詳しく解説していきます。

 

太陽光発電システムになぜ点検が必要なのか

運転開始後はあまり手間のかからないイメージの太陽光発電設備ですが、なぜ点検が必要なのでしょうか。

その理由は、大きく2点あります。1点目は法的な観点、そしてもう1点が太陽光発電システムを安定運用するためのリスクヘッジです。

まずはこの2つの観点から、点検が必要な理由について詳しく確認していきましょう。

太陽光発電システムの点検は法的に義務化されている

1点目の理由は、法的に義務化されているからです。発電設備を設置・管理する責任は所有者にあり、法令で定められた技術基準に適合させる義務があります。FIT認定を受けている太陽光発電は、出力によらず「再エネ特措法施行規則」によって点検が義務付けられています。

また、FIT認定のいかんにかかわらず、出力が50kW以上の太陽光発電システムは「電気事業法」により年2回以上の保守点検が義務付けられています。そのため、太陽光発電を事業として運用する規模であれば、基本的に点検・メンテナンスが必須となります。

点検を怠ると法令違反となり、指導や改善命令、FIT認定の取り消しといった措置が取られる可能性もあります。

太陽光発電の安定運用には義務化の点検以外も不可欠

太陽光発電システムの運用には、「法的に義務化された点検だけを実施していればよい」というわけではありません。法定点検は太陽光発電が問題なく安全に稼働しているか、維持管理できているかという保安上の観点に重きが置かれています。

しかし、太陽光発電を10年、20年と長期運用していくうちに、稼働はできているものの発電効率や設備の状態が良くないというケースが珍しくありません。常に安全に、効率よく発電できる状態をキープするためには自主的な点検やメンテナンスが非常に重要で、大きく事業の経済性や安定性が変わります。

自主点検やメンテナンスでヘッジできるリスクについて、経済面と安全面の2つの観点から考えます。

▪ 経済面のリスク

自主点検やメンテナンスでヘッジできる経済面のリスクは、売電収入の減少や機器・設備の修繕費用です。わかりやすいところでは、太陽光発電パネルのガラス割れや汚れを見落とした結果、発電量が減少=売電収入が減少するリスクがあげられるでしょう。

また、点検不足でパワーコンディショナの動作不良や故障が発生すれば、修繕費用はもちろん、修繕されるまで売電できない間の逸失利益が発生します。

太陽光発電設備は電気設備であり、長期利用することによる経年劣化は避けられません。また、太陽光発電設備は基本的に日照がよい場所に設置されるため、直射日光による高温にさらされる過酷な環境で稼働しています。少しでも経年劣化の進行をやわらげたり、異常にいち早く気付くために、自主的な点検やメンテナンスで太陽光発電システムの健全性を保ちましょう。

▪ 安全面のリスク

安全面では、太陽光発電システムの点検が十分されていないために、システムに起因した事故を起こしてしまう可能性が懸念されます。具体的には、発電設備やケーブル接続部から火災が発生した、強風時に太陽光発電パネルが飛んでしまった、といった事態が想定されるでしょう。このような事故が起こると、太陽光発電所の運営が継続できない期間の逸失利益や修繕費用が生じるほか、第三者に二次被害を与えてしまう可能性もあります。住宅用太陽光発電設備の火災が建物に延焼したケースや、事業用規模の発電所であれば、強風により飛散した太陽光発電パネルが民家や車に衝突し破損させた事例もあります。

その地域で過去に経験したことのないような大雨や荒天が昨今国内でも起こっています。ボルトの緩みのような設備そのものの劣化のみならず、敷地内での倒木が起こりそう、土壌表面が洗堀しているので排水がうまくいっていないかもしれない、といった、敷地全体で大きな事故に繋がる傾向がないかなど、自主点検やメンテナンスでリスクを最小限に抑える努力が必要です。

 

太陽光発電システムの点検の種類

ここでは、自分でも日々できる点検作業を4つ紹介したのち、専門事業者に委託するO&Mサービスの例をいくつか紹介します。

  • 発電量のチェック
  • 目視点検
  • 草刈り
  • 除雪

発電量のチェック

外せない点検項目の1つに、発電モニターで定期的に発電量をチェックすることが挙げられます。その日の天候次第で発電量は上下しますが、晴れているのに発電量が著しく少なければ明らかに何か異常があることがわかるでしょう。発電量のチェック頻度が少なければ、発電量の低下が生じていても長期間気付かず過ごしてしまうことになります。

また、異常に気付かないまま稼働を続けた結果、パワコンなど設備不良を放置することで状況を悪化させたり、故障につながったりする可能性もあります。

日頃から発電量をこまめにチェックして、異常が生じたときにすぐ気付けるようにしておきましょう。

目視点検

点検の基本中の基本になりますが、目視点検は太陽光発電でも欠かせない点検です。目視点検では、各設備ごとに主に次のようなポイントを重点的にチェックします。

▪ 太陽光発電モジュール(パネル)

太陽光発電モジュールは発電所の中で最も大きい面積を占めます。

  • 影がかかっていないか
  • ガラス割れや変形、焦げ跡がないか
  • 鳥のフンや樹液など、雨で流れないような汚れがついていないか
  • パネル裏に鳥や動物の巣が作られていないか
  • 架台との固定がゆるんでいないか

▪  パワーコンディショナ(PCS)

太陽光発電の心臓部ともいわれるパワーコンディショナは、故障や不具合が起こりやすい設備です。点検する際は、優先的に確認しましょう。

  • 動作音に異常がないか
  • 表示部にエラーメッセージが出ていないか
  • 通気孔に詰まりがないか
  • 発熱していないか         など

▪ 配線ケーブル・架台

配線ケーブルや架台は長期使用に耐えられるような設計になっていますが、徐々に劣化は進んでいきます。点検の際は、以下のポイントに注意しましょう。

  • 配線ケーブルにスレや損傷、断線がないか
  • 配線ケーブルの接合部にゆるみや焦げ跡がないか
  • 架台にサビや変形、腐食等が見られないか
  • 架台に鳥や動物の巣が作られていないか
  • 基礎に亀裂や傾きがないか        など

メガソーラーのような大きな規模の太陽光発電システムは森の中に設置されることも多く、直射日光や風雨などの天候によるストレスだけでなく、木の葉や樹液、虫、野生動物など、生物の影響も受けて少しずつ汚れるものです。目視点検でわかる有益な情報も多いので、基本に立ち返って目視での点検を怠らないようにしましょう。

一方、目視点検が異常箇所の発見に向いているような異常ばかりではありません。目視では発見が難しいタイプの異常については、「発電量のチェック」や「O&Mサービス」で異常を見つけましょう。

草刈り

雑草を放置してしまうと太陽光発電パネルに影がかかり、発電量の減少やホットスポットの原因になります。影のかかった太陽光発電パネルが1枚だったとしても、回路の組み方次第では周辺のパネル分も発電量が落ちてしまうので注意しましょう。周辺に木がある場合は、落ち葉がかかることでも同じ状況が生じるので要注意です。

パワコンなど電気設備の内部やケーブルの配線部にツタが侵入してくることもあります。機器の故障はもちろん、ショートして火災につながる恐れもあります。

このほか、長い間雑草を放置していると、近隣の住民の方の歩行や運転の妨げになったり、雑草の種が飛散すること、また、景観の問題からクレームやトラブルになるリスクもあります。雑草が伸びる時期を見越して、定期的に草刈りを行いましょう。

除雪

北海道や東北・北陸などの積雪の多いエリアでは、太陽光発電システムの除雪も必要な点検・メンテナンスの1つです。

一般的に太陽光発電システムを積雪エリアに設置する場合、地面に積もった雪が太陽光発電パネルにかからないように架台を高くし、また太陽光パネルの傾斜を大きくします。しかし、太陽光発電パネルから滑り落ちた雪が地面に積み重なることで、下段のパネルに雪がかかってしまうことがあります。そうなると発電量は下がってしまい、雪の重みで太陽光発電パネルや架台が変形する可能性もあります。また、電気的なトラブルが発生した際に発電所が雪に埋もれていると、除雪から始める必要があり、復旧までに時間を要します。

このほか、近年では気候変動の影響で、これまでにその地域の過去の最大積雪量を超えるような局所的な豪雪に見舞われるケースも見られます。積雪仕様で十分な強度を持たせていたとしても、それ以上の雪が積もって重みで変形、場合によっては損壊したメガソーラーの事例もあります。大雪が予想された場合はパネル・架台の強度を超えるような荷重がかかる前に除雪をする必要があります。

除雪に必要な除雪車・重機は、大雪の予報が出た直後の準備をすることが難しいため、計画的な除雪への備えをお勧めします。

 

O&Mサービスでの点検メニュー例

上記の点検は専門的な知識や資格がなくともできますが、太陽光発電所の規模や設置場所によっては自力での点検が難しい方も多いでしょう。また、電気設備に触れる危険も伴います。そんなときに活用したいのが、O&M(オペレーション&メンテナンス)サービスです。

ここでは、点検メニュー例をご紹介いたします。

  • 計測機器での測定検査
  • 障害復旧対応・駆けつけ
  • 遠隔監視サービス

計測機器での測定検査

専門的な計測機器を使って、各種測定検査を行います。測定項目としては、主に次のようなものがあります。

  • 絶縁抵抗検査
  • 接地抵抗検査
  • IR測定

絶縁抵抗検査は、太陽光発電パネルやケーブルに流れる電流が規定値以上になっていないかを、絶縁抵抗値計を使って確認する検査です。

また、太陽光発電パネルはアース線を架台などを通して接地しているため、接地抵抗計を用いて接地抵抗(アース)に問題ないかの確認も必要です。

このほか、赤外線サーモグラフィカメラで太陽光発電パネルの発熱がないかチェックするIR測定もあります。ホットスポット化したり抵抗が高くなっている場合など、太陽光発電パネルに異常があると発熱するため、異常部の発見につながります。近年ではサーモグラフィカメラをドローンに搭載して、太陽光発電パネルの状態をチェックするサービスも増えてきています。

障害復旧対応・駆けつけ

障害復旧対応、駆けつけサービスも太陽光発電のO&Mサービスの1つです。遠隔監視サービスとセットで提供されていることが多く、異常を検知してからすぐに現地で原因の調査を実施してくれます。対処が遅くなれば売電損失につながるだけでなく、機器の故障や影響範囲が大きくなるリスクが高まるので、遠隔監視サービスと一緒に任せることで安心感が高まるでしょう。

遠隔監視サービス

遠隔監視サービスは、太陽光発電の発電状況をインターネット経由で遠隔地からモニタリングしてくれるサービスです。日々の発電状況をチェックしますので、何か異常が発生した場合にでもすぐに気付けることがメリットの一つです。発電停止やパワコンの停止、発電量の低下を検知して、メール通知やアプリ通知などでアラートを出してお知らせしてくれます。

また、発電状況を1ヶ月や1年でまとめて、レポートする遠隔監視サービスもあります。

 

まとめ

太陽光発電システムの点検は法律で義務化されており、出力50kW以上では年2回の点検が必須です。また、太陽光発電所を安全かつ継続的に運用していく上では、自主点検も非常に重要となってきます。

自力でできる点検もありますが、設置場所や時間の関係で手をつけられていない方も多いかもしれません。今後のメンテナンスにご不安がある、予想以上に手間がかかっているなどお困りの方は当社までお問い合わせください。

 

※なお、弊社では50kW(DC)以下の低圧太陽光低圧太陽光発電設備に関するお問い合わせは承っておりません。予めご理解いただけますようお願いいたします

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