オンライン代理制御とは?対象範囲やメリット・デメリットなどを解説

オンライン代理制御とは、オンライン制御事業者がオフライン制御事業者の行うべき出力制御を代わりに実施することを指します。出力制御量の低減や再生可能エネルギー発電設備の運用効率化を目的に、太陽光発電設備のオンライン代理制御の仕組みが導入されました。

この記事では、オンライン代理制御の概要や導入の背景を詳しく解説します。オンライン代理制御のメリット・デメリットと併せてオフライン制御との違いもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

 

オンライン代理制御とは?オンライン制御事業者が代わりに行う制御方法

出典:経済産業省|オンライン代理制御について

オンライン代理制御(経済的出力制御)とは、オフライン制御事業者が行うべき出力制御をオンライン制御事業者が代わりに実施することをいいます。オフライン制御事業者は、発電及び供給を行い、出力制御は実施しません。

オンライン制御事業者が送配電事業者から通常の買い取り価格で自身の発電設備に適応されている調達価格による対価を受け取り、オフライン制御事業者の発電相当分は、出力制御を受けたとして対価が支払われないのが特徴です。ただし法令上では、オンライン制御事業者が発電・供給を行い、オフライン制御事業者が出力制御を行ったとみなされます。

 

そもそも出力制御とは?出力制御の種類について

そもそも出力制御とは、需要と供給(電気の使用量と発電量)のバランスを保つことを目的に、発電量(供給)を制御することです。出力制御には、主に以下の2種類があります。

  • 需給バランス制約による出力制御
  • 送電容量制約による出力制御

それぞれの出力制御について詳しく解説します。

 

出力制御1. 需給バランス制約による出力制御

需給バランス制約による出力制御とは、主に使用量(需要)に対して発電量(供給)が多く、電気が余ってしまうと予測されるときに行われる出力制御です。需要と供給のバランスを計るため、電気の安定供給に必要な電源を制御して調整しています。

基本的に需要が少ない時期は、火力発電の出力制御や地域間の連系線の活用による他エリアへの送電などで需給バランスを調整しているのが特徴です。それでもなお、電気が余ると予想される場合には、再生可能エネルギーの出力制御が行われます。

 

出力制御2. 送電容量制約による出力制御

送電容量制約による出力制御とは、送電線・変圧器の容量にあわせて行う出力制御のことです。送電線は、発電した電気を需要者側に送るための電線、変圧器は発電した電気を利用に応じた大きさの電圧に変えるための機器をいいます。

発電された電気は、変圧器で電圧を下げてから送電線を通って送られますが、流せる電気の量には限界があります。もし、日々の運用において容量を超過して電源を接続する場合、電源の出力制御が必要です。

この出力制御が「送電容量制約による出力制御」にあたります。

 

オンライン代理制御導入の背景

オンライン代理制御導入の背景には、出力制御および運用の最適化の観点があります。オンライン制御は、遠隔による制御で需給状況に応じた出力調整が可能です。その一方で、オフライン制御は現地操作で一定時間発電を完全停止させるため、オンライン制御と違って柔軟な対応ができません。そのため、実需給に近い柔軟な運用ができるオンライン制御化することが望ましいとされています。また、再生可能エネルギーの更なる導入の観点からも事業所間の公平性を確保しつつ、オンライン制御によって出力制御量低減を図ることが大切です。

ただし、すべての再生可能エネルギー発電設備をすぐにオンライン化することは制度上簡単ではありません。そこで、出力制御量の低減や再生可能エネルギー発電設備の運用効率化を目的に、太陽光発電設備のオンライン代理制御の仕組みが導入されました。

 

オンライン代理制御導入後の対象範囲

オンライン代理制御導入後は、これまで出力制御対象外だった「10kW以上500kW未満の太陽光発電所」も出力制御の対象となりました。旧ルール・新ルールの出力制御について、以下の表をご覧ください。

出力制御区分旧ルール新ルール無制限無補償ルール
500kW以上年間30日ルール(※1)が適用される年間360時間ルール(※2)が適用される無制限無補償
50kW以上500kW未満当面の間、出力制御の実施対象外

→出力制御実施対象外から実施対象に変更

10kW以上50kW未満
10kW未満当面の間、出力制御の実施対象外

※1:1年のうち30日を上限として無補償で出力制御できるルール。
※2:1年で360時間を上限として無償での出力制御の要請ができるルール。

表にある、旧ルールの「10kW以上50kW未満」「50kW以上500kW未満」がオンライン代理制御導入後の対象範囲に加わります。また、日にち単位から時間単位のルールに切り替えられており、無償での出力制御の上限が年間360日になっているのも特徴です。10kW未満の太陽光発電所に関してはこれまでと同様、出力制御の実施対象外となります。

 

オフライン制御とオンライン代理制御の違い

以下の表は、ここまでの情報からオフライン制御とオンライン代理制御の違いをまとめたものです。

項目オフライン制御オンライン制御事業者
出力制御の実施被代理制御本来制御(※)+代理制御
遠隔制御不可(現地操作で一定時間発電を完全停止させる)可能(需給状況に応じて出力調整が可能)
支払金額発電電力料金-代理制御精算発電電力料金+代理制御精算

※事業者が本来行うべき出力制御部分のこと

オフライン制御事業者は、オンライン制御事業者に代理制御してもらうことで、本来出力制御される時間帯の発電量について対価が支払われません。一方で、オンライン制御事業者は代わりに行った制御分の対価が支払われます。遠隔制御の可否により、支払金額(売電金額)に影響が及ぶことにご注意ください。

また、代理制御精算は、およそ2か月後の受給料金支払いのタイミングで実施されることが特徴です。時期がずれて減額・増額があることに注意しましょう。

 

オンライン代理制御のメリット

オンライン代理制御のメリットは、出力制御の対応を柔軟に対応できる点です。出力制御量の低減や発電設備の運用効率化を目的に仕組みが導入されているため、オンライン代理制御はオフライン制御より無駄がありません。

ただし、再生可能エネルギーの更なる導入の観点からは、事業者間の公平性を確保しつつ、オンライン制御にて出力制御量低減を図ることが大切とされています。つまり、発電設備のオンライン化が推奨されています。

発電設備のオンライン化には、高いコストがかかるリスクを伴うため、長期的な売電収入を考慮したうえで導入を考えることが大切です。なかでもオンライン化の影響も大きい500kW以上の太陽光発電所を運用している太陽光発電事業者様は積極的にオンライン化をご検討ください。

 

オンライン代理制御のデメリット

出力制御の対応を柔軟にできる一方で、オンライン代理制御には以下のデメリットもあります。

  • みなし制御分の売電収入源が減る
  • 制御時間がオフライン対応と同じとみなされる

オンライン代理制御によって出力制御を行った場合、制御時間がオフラインによる制御と同じにみなされるだけでなく、代理制御時に基づくみなし発電量分の対価が売電収入源から差し引かれます。

そのため、売電収入(当月の発電料金)がオンライン代理制御分少なくなります。出力制御の精算の流れや精算比率については、こちらの記事で詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。

 

オンライン代理制御はいつから?2022年度内から10kW以上の発電所が対象

これまでご紹介したオンライン代理制御は、2022年度内から導入されており、「10kW以上500kW未満の太陽光発電所」も出力制御の対象に加わります。500kW以上の太陽光発電所に関しては、これまで通り出力制御の対象です。

出力制御は、最初に九州電力エリアで実施されましたが、2022年に入ってからは北海道電力・東北電力・関西電力など主要な電力会社でも出力制御が実施されています。

東京電力エリアでのみ実施が確認されていませんが、2024年には群馬県と山梨県の一部で出力制御が予定されており、また、その他の地域でも今後出力制御が行われることは十分に考えられるため、太陽光発電所の導入を検討している太陽光発電所事業者様は出力制御のことも把握しておきましょう。

 

まとめ

この記事では、オンライン代理制御の概要と対象範囲、メリット・デメリットについて解説しました。改めて、本記事でご紹介した内容をまとめます。

  • オンライン代理制御とは、オフライン制御事業者が行うべき出力制御をオンライン制御事業者が代わりに実施すること
  • オンライン制御は、遠隔による制御で需給状況に応じた出力調整が可能
  • オフライン制御は現地操作で一定時間発電を完全停止させるため柔軟な対応は難しい

現在、実需給に近い柔軟な調整ができるオンライン制御化が望ましいとされています。新規で出力制御の対象となった「10kW以上500kW未満の太陽光発電所」に限らず、500kW以上の太陽光発電設備を運用している太陽光発電事業者様も、オンライン化をご検討ください。

 

【2024年2月公開予告】
「オンライン代理制御導入後の出力制御方法」精算までの流れや精算比率も詳しくご紹介します。

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