【制度概要】「オンライン代理制御(経済的出力制御)」とは

2022年12月から九州電力管内で運用がスタートした「オンライン代理制御」とはどのような制度なのでしょうか。
出力制御の制度のおさらいも含め、詳しく見ていきましょう。

  1. (おさらい)出力制御とは
  2. 太陽光発電における出力制御のルール
  3. (九州電力管内の)オンライン代理制御の制御方法
    1. オフライン事業者
    2. オンライン事業者
  4. オンライン化のメリットは「制御時間の短縮」~売電損失を削減することが可能です~
  5. オンライン化の効果
    1. オフライン事業者の負担軽減につながる
    2. より柔軟な制御対応が実現できる
  6. オンライン化に向けた対応について

1.(おさらい)出力制御の役割について

 「出力制御」とは電気をつくる量と使う量を一致させるために発電量を制御することです。
送電線を流れる電気は発電する量と消費する量が同時同量である必要があり、これを保つために発電量が過多になる時は出力制御が必要になります。
日々変化する需要や、発電量の予測が難しい再エネの変動を、きめ細かい発電計画が可能な火力発電等の出力調整でカバーするために「優先給電ルール」に基づいて、需要と供給のバランスを保っています。

優先給電ルール
(引用:資源エネルギー「なるほどグリッド 出力制御について」

仮にこの需給バランスのどちらか一方が崩れてしまうと、周波数が大きく変動し産業用機器に大きな影響を与えてしまいます。そして、最悪の場合、ブラックアウトと呼ばれるようなエリア一帯での大規模停電に繋がる可能性もあります。
電力の安定供給のために、出力制御が非常に大切な役割を担っています。

さらに、出力制御は再エネの導入にも繋がります。

太陽光や風力などの再エネは発電量の制御が難しいため、使用電力量以上の発電をしないよう系統への接続を制限する必要があります。そのために、発電量が需要を超えないように接続可能量を少なくし、かつ足りない電力は他の電源からまかなう必要があるため、いつまでも他の再エネ以外の電源に依存することになります。
一方で、出力制御をすると発電量が需要を超えても出力制御で調整できるので、接続可能量も出力制御をしない場合に比べて増やせる仕組みになっています。

(引用:資源エネルギー庁:「スペシャルコンテンツ」再エネの大量導入に向けて ~「系統制約」問題と対策

2・太陽光発電における出力制御のルールについて

太陽光発電の出力制御のルールは、①旧ルール、②新ルール、③指定ルール(無制限無保証ルール)の3点があります。
どのルールが適用されるかは、電力会社エリアごとに設備容量(kW)や接続申込の時期により異なってきますが、今回は九州電力エリアにおけるルールを確認していきたいと思います。

  • 旧ルール:年間30日を上限に、無補償で出力抑制するよう要請できるルール
  • 新ルール:年間360時間を上限に、無補償で出力抑制するよう要請できるルール
  • 指定ルール(無制限無補償ルール):上限時間なく無補償で出力を抑制するよう要請できるルール

上記の通り、新ルールと無制限無保証ルールの発電所はオンライン化(※)対応、旧ルールのうち、オンライン化未対応の発電所が今回のオンライン化を推奨する対象になります。

  • そもそもオンライン制御とは?
    以下のように、専用の制御機器が付いているかいないか、すなわち通信回線経由で発電所を遠隔制御可能かそうでないかで区別されます。


オンライン発電所は、発電事業者が現地で手動で制御する手間を省き、より実需給に近い柔軟な調整が可能であり、必要時間帯のみの制御ができます。
また、出力制御機器の設置義務がない旧ルールでも、オンライン制御とすることが推奨されています。

もしご自身の発電所が、どちらに属するのか分からない場合はぜひこちらのフローチャートをお使いください。

九州電力によるとオンライン化に対応することで約17%の出力制御の低減効果があるようです。
より実需給に近い運用をしつつ出力制御回数の低減が見込めるということはお伝えしてきましたが、オフライン事業者全員がオンライン化するのは難しいため、九州電力エリアでは全国の他エリアに先んじて、12月1日より新たに「オンライン代理制御」の運用がスタートしました。

 

3.オンライン代理制御の制御方法

オンライン代理制御とは、本来、オフライン事業者が手動で(現地または遠隔で)PCSを停止させるべき分を、自動制御可能なオンライン事業者が代わりに実施したとみなす制度です。

 

【オフライン事業者の場合】
~出力制御機器を設置していない事業者(発電所)~

  • 停止時間:1回当たり8時間停止したとみなされます。
    これまでのように現地および遠隔でPCSを止める作業は発生いたしません。
  • 売電金額:停止月の翌々月に精算月の前月の売電金額から代理制御分が差し引かれ入金される仕組みです。
  • 制御日数のカウント:「他のオンライン発電所が代理で制御した日数」に「現地操作等により自発電所を発電停止した日数」を加えた日数を、当該発電所の年間出力制御日数としてカウントします。 

オフライン発電所は、出力制御の要請が出ても、現地(もしくは遠隔にて)PCSを切る必要がなく、発電を継続できます。しかし出力制御実施期間中、オフライン事業者は出力制御を受けたものとみなされるため、相当する売電収入を受け取ることができません。オンライン事業者が出力制御を代わりに実施し、その対価を受け取ります。

【オンライン事業者の場合】
~出力制御対応機器を設置している事業者(発電所)~

  • 停止時間:本来制御されるべき分と代理で制御する分が混在することになりますので、一概に1回の停止で何時間止まるかは明言できないと想定されます。本来制御分は、これまで同様に実需給に合わせた時間が制御され、代理制御の場合は、1回あたり8時間になります。結果として、合算し30日以上停止されるケースも想定されます。
  • 売電金額:停止月の2か月後に前月の売電金額と本来制御分および代理制御分が相殺され入金される仕組みです。
  • 制御日数のカウント:「全出力制御日数」から「代理制御分の日数」を差引いた日数を、当該発電所の年間出力制御日数としてカウントします。

 

4.オンライン化のメリットは「制御時間の短縮」
~売電損失を削減することが可能です~

    当社が管理している九州電力エリアの複数の発電所の実績データを比較した結果、オンライン化により18か月間で約170万円、54%の売電損失の削減に成功しました。発電所の仕様に応じてオンライン化改造費用は異なってきますが、改造費用を2〜3年程度で回収できることが想定できます。

    5.オンライン化の効果

    オフライン事業者の負担軽減につながる

    オフライン発電所の実務担当者にとっては、土日などの休日に多く行われていた現地での制御作業(遠隔であってもその作業自体)が無くなるなど、担当者の負担軽減といったメリットがあります。
    また、仮に外部委託しているケースであっても、委託先に対して出力制御の依頼を行わなければいけませんし、担当者には相応の負担がかかっていることが想定されます。

    より柔軟な制御対応が実現できる

    現状の運用では、前日に制御実施通知があったにも関わらず、制御当日の需給に応じて実際には発動されなかったケースもあったため、太陽光発電事業者にとって損失の拡大につながる事象でした。
    仮に、オンライン発電所化がより進めば、出力制御の必要な場面でのみ制御対応できるようになりますので、無駄な出力制御が減るだけでなく、効率よく運用できるようになるため出力制御自体が減少することが見込めれます。

     

    6.オンライン化に向けた対応について

    • オンライン化をご希望される場合、出力制御機能付PCS等への切替およびインターネット回線の整備等が必要となります。
    • オンライン化に伴う切替や整備・維持に関わる費用については、事業者さまのご負担となります。
    • 各発電所の仕様に応じて必要な金額が異なってまいりますので、お気軽にお問い合わせください。

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