太陽光発電設備の台風被害とは?被害の原因や対策方法を解説

太陽光発電設備を運用する上で台風や大雨による被害は見逃せない問題です。強風による圧力や飛来物によって太陽光パネルが破損したり、大雨によって土砂水害が発生し基礎地盤から崩壊したりといった被害の実例があります。

この記事では、太陽光発電設備の台風被害について、被害の実例や被害に備えるためのポイント・土木対策をご紹介します。なぜ台風被害が生じるのか、どのように備えればよいのかまで解説します。

 

太陽光発電の台風被害とは

(※写真はイメージです)

太陽光発電は、自然エネルギーの1つである太陽光によって発電する設備のため、屋外設置であることから様々な天候条件による被害を想定しなければなりません。例えば、台風や局所的な豪雨によって太陽光発電設備に以下のような被害をもたらす可能性があります。

  • 強風により、太陽光パネルが飛散する
  • 大雨により、太陽光パネルの基礎部分に不具合・破損が生じる、または崩れる
  • 倒木等により、二次的に太陽光パネル・架台が損傷する
  • 大雨により設備が水没する

近年でも、台風による豪雨や土砂災害によって太陽光パネルの飛散・太陽光発電設備の崩落などの事故が発生しています。また、浸水・水没した太陽光発電設備に触れることで感電するリスクもあるため非常に危険です。

続いて、台風によって生じた被害の実例をご紹介します。

 

太陽光発電の台風・豪雨被害による実例

以下の表は、経済産業省が公表している平成30年(2018年)における太陽光発電設備の事故の実例をまとめたものです。

実例1:豪雨に伴う発電所構内での土砂崩れによる被害

項目詳細
設置場所兵庫県姫路市
発電所出力750kW
太陽光パネルの破損枚数1,344枚(全3,534枚)
パワコンの破損台数60台(全70台)
事故内容豪⾬に伴い⼟砂崩れが発生し、太陽光パネル・パワコンが崩落、設備が損壊した。

出典:経済産業省|今夏の太陽電池発電設備の事故の特徴について

 

実例2:強風によるパネルの飛散事故

項目詳細
設置場所⼤阪府⼤阪市住之江区
発電所出力6,500kW
太陽光パネルの破損枚数13,780枚(全28,160枚)
パワコンの破損台数
事故内容台風に伴う強風により、パネルが架台から引きちぎれ飛散、建物が損傷。また、破損したパネルからの発火が発生。

出典:経済産業省|今夏の太陽電池発電設備の事故の特徴について

 

実例3:強風に伴って飛散した圧力・飛来物による太陽光パネルの破損事故

項目詳細
設置場所⼤阪府⼤阪市此花区
発電所出力9,990kW
太陽光パネルの破損枚数13,413枚(36,480枚)
パワコンの破損台数
事故内容台風に伴う強風により、風圧による影響でパネルが破損。また、構内外の砂利が飛散し、太陽光パネルのガラス面に衝突して破損した。

出典:経済産業省|今夏の太陽電池発電設備の事故の特徴について

台風による被害の実例を見ると、大雨・強風が原因となってさまざまな事故につながっていることがわかります。定期的なメンテナンスや防災パトロールによって、台風による被害を最小限に抑えることが大切です。

 

太陽光発電の台風被害が生じる原因

先ほど、台風に伴う太陽光発電設備の被害の実例をご紹介しました。被害の実例から原因をまとめると、主に以下の3つです。

  • 台風の強さ
  • 施工・土木対策が不十分
  • メンテナンスが行き届いていない

それぞれの原因について詳しく解説します。

原因1. 台風の強さ

太陽光発電の被害が生じる原因としてまず挙げられるのは、台風の勢力の強さです。環境省でも地球温暖化に伴う台風の勢力強化が懸念されています。

太陽光発電設備では、JIS規格や法令などで耐風圧をはじめとしたさまざまな強度が厳しく定められていますが、勢力を増した台風によって想定外の被害を伴う可能性があります。

例えば、土木対策が不十分な発電所においては、台風によって以下のような崩落被害も確認されています。

出典:経済産業省|太陽電池発電設備による感電事故防止について

また、先ほどご紹介した被害の実例の中でも、「アンカーとフロートを接続するボルトが風速30~40m/sに耐える設計であってにもかかわらず、台風による風圧をはじめとした複合的な原因が重なって破損が生じた」との報告もされています。

太陽光パネル架台の強度に関するJIS規格(JIS C 8955)は2017年に改訂され、より強度を求められるようになりました。特にFIT初期に施工された発電所や、セカンダリ案件で取得した施工時期の早い発電所については、改めてチェックしてみるとよいでしょう。

原因2. 施工・土木対策が不十分

太陽光発電設備を設置時に施工・土木対策が不十分であると、台風が発生した際の被害につながる可能性があります。例えば、以下のようなケースです。

  • 調整池・沈砂池の容量(数)が不足している
  • 排水設計が現地の土木環境と合っていない
  • 緑化不足により計画以上の雨水流出

新エネルギー・産業技術総合開発機構が公表している「地上設置型太陽光発電システムの設計ガイドライン」でも、事前調査にて地形・地盤の特徴把握や地盤災害の危険性について調べることの重要性、注意が必要な地盤などが記載されています。

一度、施工・土木対策が十分かどうか見直してみるとよいでしょう。

原因3. メンテナンスが行き届いていない

先ほどご紹介した、施工・土木対策が十分に施工されている場合でも、定期的なメンテナンスが行き届いていない場合は台風による被害につながる可能性があります。

メンテナンスの例としては、以下の通りです。

  • 堆積土砂の浚渫(かき出し):調整池、沈砂池、側溝、桝
  • 水路の落ち葉や土砂の取り除き
  • 架台やパネルのボルト緩みの確認
  • 雨裂(雨による線状の崩壊地)の補修:特に杭の突出

台風による被害を最小限に抑えるためのメンテナンスは、太陽光発電設備に対してのものだけではありません。先ほどご紹介した施工・土木対策と合わせてメンテナンスも十分に実施できているか確認してみるとよいでしょう。

 

太陽光発電設備が台風被害に遭った場合のポイント

自社で運用している太陽光発電が実際に台風の被害に遭った場合はどうすればよいのでしょうか。ポイントは主に以下の3つです。

  • 被害状況の確認を行う
  • 必要に応じて電源をオフにする
  • 感電・漏電事故に十分注意する

原則として、専門知識を有していない方は太陽光発電設備に近づかないことが大切です。それらを踏まえた上で、これからご紹介するポイントを確認してみましょう。

ポイント1. 被害状況の確認を行う

まずは、太陽光発電設備にどのくらいの被害が生じたのか状況確認が大切です。ただし、不用意に設備に近づくのは危険が伴うため、現地の安全が確保できるまでは近づかないようにしましょう。

経済産業省でも、破損した太陽光発電設備に対してパネルや設備に触れない・近づかないことが推奨されています。現場の確認は電気主任技術者やO&M会社など、専門知識を有したプロが行い、そうでない方は設備に近づかないことが大切です。

設備の状況によっては、専門業者に具体的な点検も依頼してみてください。

ポイント2. 必要に応じて電源をオフにする

可能であれば、太陽光発電設備の電源をオフにすることが大切です。電源をオフにすることで断線に伴う漏電・電気火災のリスクを抑えられます。

ただし、先ほども解説した通り、専門知識を有していない方が不用意に近づくことは二次災害を招く可能性があるため推奨いたしません。電気主任技術者やO&M業者など、専門知識を有した技術者にできる限り早く通報し、到着を待って対応してもらいましょう。

ポイント3. 感電・漏電事故に十分に注意する

何度もご紹介した通り、現地の安全確保・故障した設備の回収が完了するまでは、感電・漏電事故に十分注意し、不用意に近づかないことが大切です。

例えば、破損した太陽電池発電設備に太陽光が当たっている場合、太陽光パネルや電源の接続部、架台などに触れることで感電の原因につながります。また、周囲の人間に対しても不要に設備に触れたり近づいたりしないよう注意を促してください。

二次災害まで十分に懸念して、台風や大雨による被害を最小限に抑えることが大切です。

 

台風被害に備えるための太陽光発電の土木対策

台風被害に備えるための太陽光発電の土木対策は、主に以下の2つです。

  • 定期的なメンテナンスを実施する
  • 設計・施工をチェックする

それぞれの対策内容について詳しく解説します。

対策1. 定期的なメンテナンスを実施する

台風による被害を最小限に抑えつつ、太陽光発電を安全に運転するためには定期的なメンテナンスが欠かせません。運転管理・保守点検管理によって、機器の損傷・不具合の確認や万が一トラブルが生じた際の早期復旧を図ることが大切です。

弊社では、土木エンジニアによる定期的またはスポットでの防災パトロールサービスを提供しています。防災パトロールによって、災害リスクの査定・トラブルの予兆検知・現在進行形で生じているトラブルの対処法を提示いたします。土木工事は調査・設計・工事と時間がかかるため、早めのスタートが必要です。

ぜひ、この機会に利用を検討してみてはいかがでしょうか。

対策2. 設計・施工をチェックする

一度、太陽光発電設備の設置状況・周辺環境の変化を再度見直すことも大切です。特に日本の場合、雨が多く傾斜も急であるため、排水対策が上手く行えているかどうかが重要です。

排水機能が不十分な場合、台風による大雨によって設備の浸水・水没につながりやすくなります。

弊社では、現在の設置状況で排水が上手く行えていない場合の追加工事にも対応しています。

例えば

  • 設備周辺の排水がうまくいっていない場合は、導水・水みち移動・分散等状態に合った処理を行う
  • 法面に湧水がある場合は土砂崩壊につながるため、水抜きパイプの設置など、状態に合った対策を行う
  • 雨水流速の速い箇所には減勢対策を行う
  • 沈砂池の浚渫を行う
  • 調整池・沈砂池の追加設置を行う

梅雨や台風シーズン前に早めに対策しておくことが被害の最小化につながります。
土木対策を踏まえ、太陽光発電設備に関して気になることがございましたら、まずはお気軽にお問い合わせください。

 

太陽光発電設備に関する保険の確認・加入も大切

太陽光発電設備に関する保険の加入・確認も大切です。保険に加入しておくことで、台風が生じた際のさまざまなトラブルに対応しやすくなります。

例えば、東京海上日動が提供している「太陽光発電設備 廃棄費用&賠償責任保険」では、以下のような事故の例に対して補償が用意されています。

  • 太陽光パネルの飛散による破損・人身トラブル
  • 冠水被害で壊れた機器の廃棄費用
  • 土砂崩れによって道路を塞いでしまった際の損害賠償、再発防止のためのコンサルティング依頼

上記のようなトラブルに対して初期対応費用や事故発生時の対応・事業継続用の費用の支払いなどの対応が用意されています。保険に加入しておくことで、万が一のトラブルにも備えられるため、ぜひ加入を検討してみてはいかがでしょうか。

 

台風被害に備えた上で太陽光発電設備を運用することが大切

この記事では、太陽光発電設備の台風被害の実例や対策のポイントを解説しました。改めて、本記事でご紹介した内容をまとめます。

  • 台風によって基礎からの崩落事故・太陽光パネルの飛散事故につながる
  • 台風被害は台風の強さだけでなく施工・土木対策やメンテナンスが行き届いていないことが主な原因
  • 台風被害に遭った際は不用意に近づかず専門知識を有した業者・電気主任技術者が確認するまで待つことが大切

弊社では、定期的またはスポットでの防災パトロールサービスを提供しています。防災パトロールによって、災害リスクの査定・トラブルの予兆検知・現在進行形で生じているトラブルの対処法を提示いたします。また、土木工事が必要となった場合の工事対応も承ります。

また、現在の設置状況で排水が上手く行えていない場合の追加工事にも対応しています。現状の排水状況に不安がある事業者様も、ぜひこの機会に対策を検討してみてはいかがでしょうか。

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